よりよいフリースとは
よりよいフリースとは?
アウトドアで愛用されるフリースの起源は多くの方がご存知と思いますが、パタゴニア社が生地メーカーと共同開発して生み出した製品です。これはとても大きな発明で、中間着というカテゴリーに革新をもたらし、アウトドアのレイヤリングのマストアイテムとなりました。今ではアウトドアウェアとして冬のラインナップにフリースを揃えていないブランドは無いといっても良いほどで、さらに、一般着としても多くの支持を受けていますから、世界中で「一人一枚」的に着用されている服と言えるでしょう。
▼フリース発明ストーリー
https://www.patagonia.jp/blog/2020/10/the-story-of-fleece/
我が家(4人)のフリースを集めてみました。
実際にはもっとあります・・
各家庭で活躍しているフリースですが、
近年になってこの記事でも語られているように、フリースには
いくつかの問題が含まれていることが分かってきました。
1.バージン原料(石油)から生成されるポリエステルを使うこと
2.世界中で着用されるため多くの石油原料が使われること
3.フリースの起毛などの微細な繊維が「マイクロプラスチック」として抜け落ちること
4.「マイクロプラスチック」が洗濯の時に大量に発生し海へ流れでていること
5.「マイクロプラスチック」が海で長い年月を経ても漂い続けること
6.土中処分でも生分解されずに長期間自然界に残ってしまうこと
機能的に優れたフリースが、一方で環境に負荷を与える側面が明らかになり、それに目を向ける事が必要になってきました。
フリースのエコ化という課題
そこで、フリースの本体生地の「非」或いは「低」環境負荷化=エコ化という対応策として
〇バージン原料のポリエステルではなくペットボトル由来の「リサイクルポリエステル」を使う
- パタゴニアが先駆けて実践した解決策です。
2021年時点では、すでに技術も確立され広く普及しています。 - 単価も下がり、機能的にもバージン原料のフリースと遜色はありません。
フリースのエコ化の基本の「き」ですね。
STATICでも、リサイクルポリ素材はLead Zip Hoodyに採用しています。
→メリット:バージン石油の使用削減、ゴミ削減、繊維生成時のCO2排出量削減
→デメリット:マイクロプラスチック削減の対策になっていない
- 〇マイクロプラスチックを削減する
- こちらもひとつの解決策です。
大別して2種類があります。 - A:ポリエステルを使うが、マイクロプラスチックとして繊維が離脱しにくいような構造を採用する。ポーラテック社のPOWER AIR®が代表的です。
→メリット:マイクロプラスチック削減
→デメリット:石油由来原料の使用継続
B:海水及び土中生分解性の繊維を使う。ユーカリ由来のテンセル®やウール繊維が挙げられます。
STATICでは、Mt to Sea Hoodyでこのテンセル繊維を採用しています。
→メリット:マイクロプラスチック削減、石油原料の使用量削減、CO2削減、自然界での残留性の低減
→デメリット:場合により価格UP, 重量増、速乾性低下
軽さや濡れへの強さ、価格ではリサイクルポリエステルが魅力的です。
ですが、マイクロプラスチック問題への解決にはなりません。
逆にマイクロプラスチック問題にアプローチ出来ている素材は、軽さや濡れ対策、価格面でポリエステルに劣ります。
明確に言えることは、我々がアウトドアシーンで求める機能性と環境性を完璧に保持する素材は未だないという事です。そして、現時点では何を優先し、どのレベルまでを求めるかを考えながら、選択していく事が大切だということ。
冬季登山用フリース、ハイキングシーンでのフリース、普段着用フリースなどシーン別に使い分けることがいいかもしれません。でも、沢山買ってほしいという事ではありません。今あるものを上手に使いながら、新しく買うときには、そんなことを考えながら選んで欲しいと思います。
造るという工程での課題
さて、これらとは別に、フリース製造工程の環境性という問題も忘れてはいけません(ウエア全般に言えることですが)
出典:WWF/中国の繊維工場からの排水
工場では、ごみ処理、染色時の燃料、水の処理、電力の由来など、わたしたちが目にしない過程で多くの環境への影響、CO2やゴミの排出が関わってきます。
さらに言うと、繊維、糸の製造、生地の製造、衣類の製造の各過程が出来るだけ近い所で行われることにより、移動のときのCO2排出問題を解決できます。
たとえば、STATICのAdrift シリーズは、繊維から商品になるまでを全て国内で実施しています。
そして、生地製造における環境負荷軽減についても確認しています。
ただ、一方でバージン原料でありマイクロプラスチック削減への貢献は出来ていません。
STATICの選択が全て完璧とはいいません。我々が消費者という立場から逃れにくい以上、完璧はあり得ないのかもしれません。ただ、最近明らかになっているように、CO2を出しても、地球が処理できる範囲内(プラネタリー・バウンダリー)に抑えることが出来れば、地球温暖化対策への貢献となるわけです。つまり、消費と製品の環境性を見直し精査することでCO2の排出を「しない」ではく「低くおさえる」ことができ、その活動が持続的な環境維持、持続的なアウトドア活動へ繋がっていくはずです。
これだけ流通量が多いフリースを、こうして注目し、考える意義はそこにあります。
一方、マイクロプラスチック問題は地球温暖化とは別で
意識して対応していかなくてはなりません。
目に見えないほどの海の細かいゴミは実感を持ちにくいかもしれません。しかし、山は海に繋がり、私たちの暮らしともつながっていて、生態系への影響も、最悪の場合、わたしたちの健康への影響とつながる心配もあります。直接からだに入る食品と同じで、洋服にも目を向ける事が、健康的な生活を送る上で欠かせないと信じています。
STATICは、パタゴニア社に大きな尊敬を抱きつつ、その歩みの上に活動させていただいていることを感謝しています。そして、彼らの築いてきているものに全てを託すのではなく、アウトドア・コミュニティーの一員として、同じような貢献をしたいと考えています。彼らだけにこのミッションを託すのはあまりにも無責任でしょう。STATICはまだまだ立ち上がったばかりの超微小な存在ではありますが、より環境にいい選択肢を探し、製品として提案できるよう努めていきたいです。
いつかイヴォンの苦労話を直接聞くことを夢見て。
ロゴの上空を飛ぶ「こあほうどり」
こあほうどりは色とりどりのエサを好んでとる習性があり、犠牲となるのは親どりのみならずひなも消化できないプラスチックばかりが胃の中で増え悲しい結末を迎えます。
現行のSTATICの製品はまだ完璧とはいえません。
細かいパーツまで含めるとエコではないものもあります。 まだ私たちの取り組みは始まったばかり。課題を解決するため、情報を開示し皆さんの協力を仰ぎながら進んでいきたいと考えています。
▼グリーンピースより
マイクロプラスチック問題の新しい情報として、たとえば、プラスチックが溶けるのに数百年かかるから人体への影響はないのではないかとの説がありますが、魚の身から環境ホルモン(プラスチックを成型しやすくするための溶剤や紫外線で劣化しないようにする紫外線吸収剤など)が検出されたなど、掲載されています。
【2021年最新】マイクロプラスチック汚染、海や環境、健康影響についてわかってきたこととは?
[ the writer ]STATICBLOOM
[ update ] 2021.09